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【ETAムーブメント】供給問題について

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皆様は【ETA2020年問題】をご存じでしょうか? そもそもETAって何?と思う方もいらっしゃるかもしれません。 もちろん、ご存じな方も大勢いらっしゃると思いますが、2002年にスウォッチグループから発信されたアナウンスが時計業界に大きな混乱を巻き起こす引き金となりました。 今回はタイトルにもある【ETA2020年問題】を知るため、「ETA社」の歴史を振り返るとともに、【ETA2020年問題】のその後を追ってみました。

ETA社

ETA SA Manufacture Horlogere Suisse(エタ エス アー マニュファクチュール オルロージュ スイス) 歴史は古く、1856年、スイスで前身のエタ社が設立され、懐中時計の*エボーシュ(半完成品)を製造する。 *エボーシュ(ebauche)フランス語で「草稿」「下書き」を意味します。 時計業界では汎用ムーブメントの半製品をエボーシュと呼びます。 現代でも汎用ムーブメントのエボーシュを供給するムーブメント専業メーカーは多数あり、各時計メーカーに供給されております。 現在ETA社は「スウォッチグループ」製造部門の傘下にあります。 1876年に完成品時計の製造まで行い、製品はマニュファクチュール(ムーブメントから自社一貫製造)となる。 1905年エテルナに社名変更をする。 1926年エテルナからエボーシュ専門部門としてエタが分離し、時計製造会社「アドルフシールド社」「フォンテンメロン社」を中心とする、新たな企業として「エボーシュグループ」が誕生する。 ただし、合併したのではなく、それぞれが独自に企業としての活動を行ったといわれています。 その他には、バルジュー、ユニタスなども「エボーシュグループ」に参加していました。1970年エボーシュグループ内にクオーツムーブメントの製造を担当するEEMが生まれ、1976年クオーツ式時計に進出する。 1978年エタ社がアドルフシールド社と合併する。 1982年エタ社、EEM、フォンテンメロン社が統合を行い、11月にはエタ社が新たなコンセプトとして打ち出した低単価の腕時計「スウォッチ」をアメリカで販売、その後「スウォッチ」は世界的なヒットとなり、有名デザイナーとコラボレーションするなど話題となりました。 1985年エボーシュグループの企業が全て統合され、ほぼ現体制に近いエタ社(ETA SA Fabriquesd’ Ebouches)となる。 ETA社がムーブメントを供給していた主なメーカー ・パネライ ・IWC ・タグ・ホイヤー ・ブライトリング ・フランクミュラー など、あまりの多さに全て紹介することは省略させていただきますが、90年代には約80%以上のメーカーに搭載される程の信頼とシェアを獲得しました。 ETA製ムーブメントが選ばれる理由として、主に下記の理由が挙げられると思います。 ・ムーブメントが大量生産されるので、安価で供給される。 ・ムーブメントに安心と安定感がある。 ・メンテナンスに対応出来る技術者が多い。 非常に優秀なETA製ムーブメントですが、冒頭で述べたように、スウォッチグループが2002年に「2006年限りでエボーシュのスウォッチグループ以外への供給を終了する」とアナウンスしたのです。 ※部品に関しては、今まで通り供給されるとのことです。 エボーシュを製造するメーカーは他に「ミヨタ」「セリタ」「シーガル」などが挙がります。 この多くは各メーカーの量産モデルに使用されています。 なぜムーブメント専業メーカーのエボーシュを使用するのでしょうか? 機械式時計のムーブメント開発、製造には莫大なコストと時間がかかります。 しかし、エボーシュを使用することにより、開発コストを抑え、商品の価格に反映させ販売してきたのです。 そんな中、スウォッチグループから衝撃的な発表でしたので、時計業界は大混乱をしたわけです。 「ETA」は世界の時計メーカーで最も搭載され、常に最上級のコストパフォーマンスを誇ってきました。 そのエボーシュが使用出来なくなるのは、時計メーカーにとってはまさに死活問題です。 数多くのメーカーが方針転換せざるをえなくなりました。 スウォッチグループの創始者「ニコラス G ハイエック氏」はこう言ったそうです。 【スイスの時計メーカーは自社開発を放棄し、ETAのムーブメントを搭載して商品を高額で販売する現状がスイスの時計工芸を堕落させているのだ】と。 この発言に多くの時計メーカーは反発し、スイス競争委員会(以下COMCO)の仲裁が入るほどでした。 紆余曲折がありましたが、2020年まではムーブメントの供給が行われることとなったのです。 これが【ETA2020年問題】です。 あくまでも私個人の主観と憶測でありますが、確かにハイエック氏の仰る通り、このまま研究、開発を怠り続けた先に時計産業が発展することはないのではないかと思います。 各メーカーが同じムーブメントを使い、ブランド力だけで価格設定が行われていたのが現実でした。 自社の商品を安価で提供し、他の企業が技術開発を怠り、時計の側だけが違う、ムーブメントが同じ時計がブランド力だけで製品が高価になり企業が強くなっていく。 果たしてスイスの時計産業として、良かったことだったのでしょうか。 私個人としてはNOだと思います。 ハイエック氏が一石を投じなければ、遅かれ早かれ時計産業は衰退していったことでしょう。

これにより、各時計メーカーはどのような動きで活路を見出したのでしょうか。

・自社製ムーブメントの開発 ・マニュファクチュール化 ・ETA以外からのムーブメントを調達する この三点に方針転換することになります。 まず資本力がある大手企業は自社製ムーブメントの開発に乗り出します。 自社製ムーブメントともなれば、自社製品にとって大きな付加価値も付きます。 設計から組み立てまで緻密な作業を要求され、非常に高度な技術力が不可欠となる自社製ムーブメントは企業にとって高品質、高い技術力、安心を存分にプロモーション出来る表われなのです。 しかし、自社製ムーブメントを開発することは容易ではなく、莫大な費用ながかかり、そのうえ今まで使用していたETAムーブメントと同等、もしくはそれ以上を作り出さなければならないのです。 高精度ムーブメント、高い帯磁性、パワーリザーブなど、自社製ムーブメントを各メーカーしのぎ合いながら開発をしております。 こうして各メーカーが競争してくれることはスイスの時計産業にはもちろん、我々消費者にとっても嬉しいことですね! ただし、自社製ムーブメントが搭載されたことにより、当然販売価格にも反映せざるをえません。 近年、「時計が高くなったな」と実感するのは間違いなく生産コストの上昇によるものでしょう。 現代はデジタルツールが普及しており、CAD(Computer Aided Design)で製図や設計を行うことが出来、3Dプリンターでムーブメントを設計することによって、より複雑なムーブメントの製造も可能となりました。 例えば、タグ・ホイヤーが2016年に発表した「カレラ キャリバーホイヤー02T」というモデルがあります。 今まで1000万円オーバーが当たり前だったトゥールビヨンでしたが、当モデルはフライングトゥールビヨンを搭載しながら、販売価格は100万円台という驚きの価格設定でした。 ※トゥールビヨンとフライングトゥールビヨンの違いについては改めて書かせていただきますので、今回は省略させていただきます。 タグ・ホイヤーによれば、既存のムーブメントをベースに開発を行い、徹底したコストの見直しをした結果、この価格での実現が可能になったそうです。 高嶺の花だったトゥールビヨンが技術の進化とともに、実用的な商品として各メーカーから販売されております。 ムーブメントだけではありません。 各メーカーが新素材の開発を積極的に進めることにより、耐久性、衝撃に強く、複雑機構にありがちな厚くなってしまう欠点を克服したムーブメントを可能にしました。 ただし、科学の進歩に見合うだけの技術力が必要なため、どんなブランドでも製造可能で量産化が可能になったわけではありません。 自社開発が難しいメーカーはどうでしょうか。 ETA社以外からのムーブメントを調達する必要があります。 そこで注目されたのが「セリタ社」のエボーシュです。 1950年に設立され、元々はETA社の下請けを行っていたセリタ社ですが、自社ムーブメントの製造を成功したことにより、ETA互換ムーブメントとして、今までETAムーブメントを搭載していたモデルに搭載することが可能となりました。 こうしたことからETA製ムーブメントを使用していたメーカーがこぞって採用することとなりました。 現在、シェアは約30%程といわれ、ウブロ、IWC、タグ・ホイヤーなどもセリタ製ムーブメントを採用しております。 また、クオーツ時計にはセイコーやシチズンのムーブメントを採用しているメーカーもあります。 こうして2020年を迎えましたが、COMCOはETA製ムーブメントのスウォッチグループ以外への供給義務延長を2020年夏に決定すると 当初発表しました。 しかし、現状は審査が遅れており、2020年末までかかる見通しとなっております。 前述のとおり、現在ムーブメントの問題は細分化しております。 引き続きこの流れは続くと思いますが、各メーカーが切磋琢磨し、より良い製品を生み出す流れは時計産業にとり非常に良いことではないでしょうか。 自社製ムーブメントの開発だけではなく、マニュファクチュール化も進んでおりますが、現状は本来のマニュファクチュールとは若干意味合いが違ってる気がします。 本来ならば、部品一つから自社で生産することをマニュファクチュールとしていましたが、現在は「自社製ムーブメントの搭載」や「開発・設計・製造」まで行えばマニュファクチュールとされるようになりました。 汎用ムーブメントに手を加えカスタムしたものが自社製ムーブメントと言われるのも複雑な気持ちですが… しかしながら、ヒゲゼンマイ・ダイヤル・ケース・針ですら自社で開発・製造をする「真のマニュファクチュール」ともいえるメーカーも存在します。 ・セイコー ・シチズン ・ロレックス ・ランゲ&ゾーネ などが挙げられます。 各メーカーが目指すのは、やはり「真のマニュファクチュール」ではないかと思いますが、辿り着くには大きな壁があるのも事実です。 莫大な費用、優秀な人材、開発力、品質、技術力。 全てが揃わないことには「真のマニュファクチュール」にはなりえないのです。 とはいえ、各メーカーがしのぎを削り製品を開発している現状は【ETA2020年問題】が引き起こしたマイナス要素ばかりではなかったと思います。 今後は今まで以上に「マニュファクチュール」や「自社製ムーブメント」というワードを耳にする機会が増えると思います。 いまだ解決しないETA製ムーブメント供給問題も含め、これからも注視していきたいと思います。